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「この古いバージョンでは動作確認できていないから、発生している問題はバージョン違いに起因している可能性が高いです。なので新しいミドルウェアをインストールしたほうが無難で手っ取り早いです」
「そうか。仕方ないね、撤退だね」
「そうですね」
意地になれない。意地を張るエネルギーさえないのかもしれない。
某ミドルウェアを使用したプログラムの設置をお願いしたい旨、現場から応援要請があった。
現場に行く前に事務所でキッティングは済ませるべきというのは皆分かっている。それでも事前に作業依頼が来なかったのは私になるべく手元の作業に集中してもらおうという気遣いからだろう。しかし突然後に引けない状態で作業を依頼されるほうが負担がはるかに大きい。時間の調整も出来ないし、作業は中断される。
ひとまずプログラムをインストールし、設定まで行い動作可能な状態にまで仕立てる。
動作確認で動かしてみるとレジストリキーが見つからないとエラーが発生。そのほかにも忘れてしまったが何らかのエラーが出力されていた。環境を確認してみるとミドルウェアのバージョンがかなり古いものだった。
そのような古いバージョンでプログラムの動作確認はしておらず、正常動作しなかったとしても不思議ではない。ただ、このマシンはこれとはまた別のミドルウェアを用いた印刷プログラムがインストールされておりそちらは正常に動作するらしかった。それは別のプログラマによって実装されたものだ。
以前なら他人の実装したものに自身の実装したものが劣っていると感じて意地になってその問題を解決しようとしたはず。しかし今度は全くそう感じることがなかった。これ以上私のリソースを食わないでくれ、金で解決できるなら是非そうしてくれ、としか感じなかった。
私にとっては奇妙な心境の変化だったので書き留めておく。